「ボカロの歌詞は意味不明」といった言葉を、一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。曲にもよりますが、速いテンポの曲に乗せて畳みかけるように流れていく難解な単語の羅列。初めて聴いた時、その世界観に圧倒され、頭に「?」が浮かんだ経験を持つ人は少なくないはずです。
しかし、その意味不明さこそが、ボカロが長く現代文化の最前線に立ち続ける理由であり、多くの人を惹きつけてやまない魅力なのかもしれません。
この記事では、なぜボカロの歌詞が「意味不明」と言われるのか、その理由と特徴を見ていきながら、奥深い楽しみ方について探っていきます。
ボカロの歌詞が「意味不明」と言われる5つの特徴
ボカロの歌詞が難しく感じるのには、いくつかの共通した特徴があります。多くの人が意味不明と感じるポイントは、実はボカロならではの表現方法にあるのです。
1. 人間には不可能な早口や高音
ボカロ曲の特徴としてまず挙げられるのが、人間離れしたスピード感。アップテンポで畳みかけるように言葉の羅列が流れるような息継ぎのない高速のメロディでは、歌詞を聞き取ることが難しいのです。キーが非常に高い曲も多く、そもそも言葉として認識する前に、音の波として通り過ぎてしまうことも少なくありません。
これは、ボーカロイド等の音声合成ソフトならではの表現。物理的な限界がないからこそ生まれるこのスタイルは、ボカロの大きな魅力であると同時に、歌詞の理解を妨げる一因にもなっている側面もあります。
2. 独特の世界観を作る難解な単語や造語
ボカロの歌詞には、日常ではあまり使わないような難しい漢字や言葉遣いが頻繁に登場します。
「厭」「アイロニー」といった、かつてのボカロ曲で多用された単語を懐かしく思う人もいるでしょう。
昔のボカロ曲でよく出てきたのに最近聞かない気がする歌詞
— 超学生 (@tyougakusei) April 15, 2025
・午前2時
・厭(いや)
・アイロニー
・猫も杓子も
・〜頂戴
・ピエロ
・鱗粉(りんぷん)
・ランデブー
こうした言葉は、単に難しいというだけではなく、曲の世界観を作るために欠かせない大切な要素です。時にはクリエイター自身が作った造語まで登場することもあります。
意味を一つひとつ調べる手間はかかるかもしれませんが、それ自体が曲を深く楽しむための入り口になっているのかもしれません。
3. ストーリーが掴みにくい表現
J-POPのように分かりやすい起承転結が描かれることは少なく、情景や感情の断片をコラージュのように繋ぎ合わせた歌詞が多いのもボカロの特徴です。
「意味不明なものを羅列した歌詞」という印象を持つ人もいるかもしれませんが、これは聴き手一人ひとりの解釈に委ねるという、ボカロ文化ならではのスタイル。あえて空白を残すことで、自分の経験や感情を投影する余地を生み出しているのかもしれません。
4. 考察が歌詞を理解する鍵
ボカロのコメント欄やSNSを見ると、熱心に歌詞の考察を繰り広げている光景を目にするかもしれません。多くのボカロ曲は、この考察活動そのものが楽しみ方の一部とされています。
一見意味の通らない言葉の裏に、壮大な物語や他の楽曲との繋がりが隠されていることも珍しくありません。例えば、「ブリキノダンス」という曲の難解な歌詞が、実はインドの古代叙事詩に関連しているという考察が話題になったこともあります。
ブリキノダンスはサンスクリット語の偉大な叙事詩マハーバーラタのクルの戦いの様子を示しており…インドの古代叙事詩を読んでれば何となくわかる内容になっており………(オタク) https://t.co/x5BvQZTb76
— アユン (@AynAzalea428) February 10, 2025
一見意味不明な歌詞は、一種の挑戦状のようなもの。謎解きのように解けた時の達成感がまた次の曲へと引き込んでいくのかもしれません。
5. 意味よりも音の響きを優先
極端な話、「ボカロは歌詞のあるインスト曲みたいなものだ」という意見があるように、ボカロ曲の中には、歌詞の意味性よりも、メロディに乗せた時の語感やリズム感を最優先して作られているものが数多く存在します。
言葉を楽器のように扱い、音の響きの気持ちよさを追求する。だからこそ、意味が通じるかどうかは二の次になることがあります。これは、電子の歌声だからこそ成立する表現方法であり、歌詞の意味が分からなくても、純粋にサウンドとして楽しめるというボカロの強みでもあります。
意味不明なのは自由の証
この記事では、ボカロの歌詞が意味不明と言われる理由を探ってきました。人間離れした早口や難解な言葉遣い、そして聴き手の解釈に委ねる表現。これらが、ボカロならではの独特な世界観を形作っているのです。
もしその意味不明さに戸惑っているなら、それは新しい音楽の体験への入り口かもしれません。まずは歌詞の意味を追いかけるのをやめて、言葉の響きやリズムの心地よさに身を任せてみてください。きっと、音そのものが持つ魅力に気づくはずです。
さらに、その言葉の断片から物語を想像したり、コメント欄で他の人の考察に触れてみたりするのも、ボカロならではの楽しみ方です。