人気アイドルグループSnow Manの冠番組「それSnow Manにやらせて下さい」(それスノ)。その中でも人気の企画が、メンバーが本気で考えたコーディネートを披露する「東京それスノコレクション」、通称「ダサコレ」ですよね。
辛口審査員から「ダサい」判定を受けると、あの耳に残る音楽と共にメンバーが穴に落ちていくあのシーン、面白いながらも「この曲なんだろう?」と気になった方も多いのではないでしょうか。
「ダーサい♪ ダーサい♪」というフレーズが耳に残るあの曲の正体は、ボカロP・ピノキオピーさんが2017年に発表した『ボカロはダサい feat. 初音ミク』という楽曲です。

え、曲名が『ボカロはダサい』なの!?
と驚いてしまう曲名。実はこの曲、一見自虐的なタイトルと思いきや、ボカロ文化への深い愛情と、当時の時代ならではの音楽に対する鋭いメッセージが込められた名曲なんです。
今回はそんな歌詞に隠された意味を徹底的に考察していきます。
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「ボカロはダサい」は愛情の裏返し?
まず驚くのが、ボカロ曲なのに「ボカロはダサい」と歌ってしまうこと。これは一体どういうことなのでしょうか。
実はこのタイトル、非常に計算された戦略が隠されていると言われています。実際に「ボカロ ダサい」と検索すると、この曲が一番上に表示されるんです。つまり、ボカロに批判的な気持ちで検索した人にこそ、この曲が届くように作られているんです。
ボカロを誰よりも愛し、第一線で活躍し続けてきたピノキオピーさんだからこそ、世間の「ボカロはダサい」という声を逆手にとって、ユーモアと皮肉を込めた楽曲に昇華できたのでしょう。これはまさに、深い愛情があるからこその表現だと感じます。
歌詞の宇宙飛行士が意味するものとは?
この曲で最も多くの人が考察しているのが、最後のこのフレーズです。
そう ボカロはダサい ほら うざいほら 死ねよ ほら 消えろって言っていた人はその情熱が糧となり 憧れの宇宙飛行士になった夢が叶って 宇宙飛行士になった
ボカロを批判していた人が夢を叶えて幸せになるという、この一見不思議な結末には、いくつかの深い解釈ができます。
解釈①|批判するエネルギーを夢に使えば?という皮肉
最も多くの人が感じ取っているのが、この「皮肉」としての解釈です。
「他人を批判するために注ぐその莫大な情熱と時間。それを自分の夢のために使っていたら、宇宙飛行士にだってなれるほどの偉業を成し遂げられるのにね」
そんなメッセージが込められているのではないでしょうか。わざわざ人の好きなものを否定しに来る人への痛快なカウンターだと感じます。
解釈②|批判する人は不幸にならないという現実
一方で、これはただの皮肉ではなくリアルな現実を描いているという見方もできます。
ボカロを「ダサい」と言っていた人は、その後ボカロのことなんてすっかり忘れて、自分の人生を歩み、夢を叶えて幸せになっている。一方で、言われた側はいつまでもその言葉に囚われてしまう。
批判した人が不幸になる、単純な「正義が勝つ」というような話ではなく「他人の評価なんて気にせず、自分の楽しいを大切にしよう」という、ピノキオピーさんの達観した視点が感じられる、非常に深い表現だと思います。
2017年という時代背景と『砂の惑星』との関係
この曲をさらに深く理解するために重要なのが、この曲が発表された2017年という時代背景にあります。
この年、ボカロ界には大きな衝撃を与えた楽曲が発表されました。それは、ハチ(米津玄師)さんの『砂の惑星』です。この曲は、多くのボカロPが去ってしまい、かつての熱気が失われつつあるボカロシーンを「草も生えない砂の惑星」と表現し、大きな話題を呼びました。
『ボカロはダサい』は、まさにそんな時代に生まれた曲なのです。
一部では、「宇宙飛行士になった」とは、ボカロという”砂の惑星”から去り、メジャーシーンという宇宙へ旅立っていった人たち(ハチ/米津玄師さんなど)を表しているのではないか、という考察もあります。
もちろんこれは一つの解釈ですが、当時のボカロ界の空気を色濃く反映していると思うと非常に興味深いですよね。
もう一つの説。天才Pへのメッセージ?
実は「宇宙飛行士」というキーワードには、もう一つ、胸が熱くなるような説が存在します。それは、2015年に20歳の若さで去った天才ボカロP、椎名もた(ぽわぽわP)さんへのお悔やみではないか、というものです。
椎名もたさんの代表曲の一つに『アストロノーツ』があり、亡くなった後に公開された楽曲『ヘルシーエンド』のMVにも、宇宙を漂う宇宙飛行士が描かれています。そして驚くことに、『ボカロはダサい』と『ヘルシーエンド』のMVを手掛けたのは、Yuma Saitoさんという同じ映像作家さんなのです。
このことから、「宇宙飛行士」は、単なる批判する人たちへの皮肉だけでなく、星になってしまった友人へのリスペクトと、「君の情熱は、たくさんの人の糧になっているよ」というメッセージが込められているのかもしれません。そう考えると、この曲がまた違った輝きを持って見えてきますね。
MVの小ネタにも注目
真面目な考察が続きましたが、この曲はMVの遊び心も豊富です。
- 炊飯器からナン
お米を炊くはずの炊飯器からなぜか「ナン」が出てくるシーン。これには多くの人がツッコミを入れていますが、もしかしたら「カレーにはライス」という固定観念へのアンチテーゼなのかもしれません。 - まさかの「いらすとや」
MVの所々に、フリー素材でおなじみの「いらすとや」のイラストが使われています。これは、一部で言われる「ボカロなんて誰でも作れる」という言葉への皮肉として、「じゃあフリー素材で作ってやるよ」というピノキオピーさん流のユーモアなのではないでしょうか。
まとめ
この曲の背景には、ボカロ文化への愛、批判に対する皮肉、そして仲間へのリスペクトといった、非常に深いメッセージが込められていました。
「ダサい」という一言で片づけるのではなく、その裏にある文脈や作り手の想いに触れることで、音楽はもっと面白くなる。ピノキオピーさんの『ボカロはダサい』は、そんな音楽の楽しみ方を改めて教えてくれる一曲だと感じました。
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