マサラダ「ライアーダンサー」歌詞を考察!嘘の意味やフォニイとの関係は?

2023年6月に突如として現れ、瞬く間にボカロシーンを席巻したマサラダさんのデビュー作「ライアーダンサー」。ボーカルに重音テトSVを起用したこの楽曲は、一度聴いたら耳から離れない中毒性の高いサウンドと、手書き感あふれるコミカルなMVで多くのリスナーを虜にしました。

さらに、YouTubeでは初投稿とは思えない驚異的な再生数(2000万回超)を記録し、「とんでもない新人が現れた」と大きな話題になったのです。

しかし、この曲の魅力はキャッチーなメロディや面白いMVだけではありません。その裏には、現代社会を生きる私たちの心に深く突き刺さる、切実なメッセージが隠されています。

一見するとただの陽気な楽曲。しかし、なぜ多くの人がこの曲に「泣ける」「救われた」と感じるのでしょうか。この記事では、「ライアーダンサー」の歌詞を深く考察し、その魅力の核心に迫ります。

目次

最大のテーマ「嘘」と重音テトの存在

この曲を語る上で絶対に外せないのが、ボーカルが重音テトであるという点です。

ご存知の方も多いと思いますが、重音テトは元々、巨大匿名掲示板2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のユーザーたちが「架空の新VOCALOID」として作り上げた、エイプリルフールの「嘘(ジョーク)」から生まれた存在です。

そんな「嘘」から生まれ、多くのファンに愛されることで「真実」となった重音テトが、真正面から「嘘」をテーマにしたこの曲を歌う。この事実だけで、楽曲に何層にもわたる深みと説得力が生まれています。

サビ前の歌詞ではその始まりが嘘か真実かなんて、最終的には大した問題ではないとでも言うように、起源を問うことの無意味さを歌い上げています。

これはまさに重音テト自身の歩んできた歴史そのものを歌っているかのようです。嘘から始まった存在でも、多くの人に愛され、心を動かす存在になれば、その始まりが嘘か真実かなんて関係ない。そんな彼女からの力強いメッセージに、胸が熱くなるのです。

誰もが共感する「日常の嘘」のあるある

「ライアーダンサー」が多くの人の心を掴む理由の一つは、歌詞の巧みさにあると感じています。

冒頭では、流行りの漫画について読んだこともないのに知ったかぶりで話を合わせる様子が描かれ、続く歌詞では、横断歩道で車に道を譲ってもらう気まずさから、わざと違う道を行くふりをする場面が歌われます。これらは、コミュニティで浮かないために話を合わせる「嘘」や、少しの気まずさを避けるための「嘘」。誰もが一度は経験したことのあるような、あまりにもリアルな日常の一コマです。特に、会話のシーンでテトの声が少しだけ上ずってよそ行きのトーンになる演出は、その場を取り繕う必死さが伝わってきます。

こうした「あるある」を散りばめることで、聴き手は一気に曲の世界に引き込まれ、共感を感じるのではないでしょうか。

学生から社会人へ行くにつれて人生と共に重くなる「嘘」

この楽曲は、一人の人間の成長と社会との関わりを描いているようにも解釈できます。

  1. 学生時代 クラスメイトとの会話に取り繕って合わせるといった、些細な見栄です。
  2. 就活時代 就活では、変えられない過去の中から都合の良い部分だけを繋ぎ合わせ、まるで「偏向報道」のように自分を良く見せようとします。
  3. 社会人時代今の自分が幸せかどうかは未来の自分が決めることだから、とにかく今を踊りきった者が勝ちなんだ」と、ある種の開き直りにも似た力強さで現状を肯定します。

学生時代の無邪気な嘘は、社会に出るにつれて自分を良く見せるための「偏向報道」へと姿を変え、やがては理想と違う現実に折り合いをつけるための「自己暗示」へと変化していきます。

MVでテトがかけているサングラスは、まさに「青空に見える眼鏡」。土砂降りのような辛い現実を覆い隠し、無理にでも明るく振る舞うためのツールなのかもしれません。

フォニイへのアンサーソング?「造花」が持つ意味

一部のリスナーの間では、この曲がツミキさんの名曲「フォニイ」へのアンサーソングではないか、という考察もされています。

「フォニイ」では、偽物であることの悲哀が「造花」というモチーフで歌われていました。それに対し「ライアーダンサー」は、「たとえ見た目だけの偽物である「造花」でも、人の心を動かすことはできるのだ」と高らかに宣言します。

背景色が同じ紫であることや、ボーカルが「嘘から生まれた」テトと「実在の歌手から生まれた」可不であるという対比も、この説をより興味深いものにしています。どちらが良い悪いではなく、「嘘」に対する二つの異なるアプローチとして聴き比べると、より一層楽しめるのではないでしょうか。

MVに隠された切なさ

この曲の大きな魅力であるコミカルなMVも、実は歌詞の切なさを際立たせる重要な役割を担っています。

サビで繰り返される腕を振るだけの単純なダンスや、間奏のマイケル・ジャクソンのパロディを彷彿とさせるキレキレのダンス。これらは一見すると面白いだけですが、「嘘をついてでも明るく振る舞おう」という必死さの表れにも見えます。

特に注目したいのは、MVの冒頭やサムネイルで、よく見るとサングラスの下に涙を浮かべているテトの表情です。そして、曲の最後にはあれだけ激しく踊っていた彼女が、汗だくで疲れ果てて横たわってしまうのです。

これは、嘘をつき続けることの疲弊と限界、そしてサングラスという「嘘」だけでは隠しきれない悲しみを象徴しているのではないでしょうか。ドッキリ大成功のプラカードと共に叫ばれる「ああ嘘でよかった!」という歌詞も、本心からの叫びというよりは、そう自分に言い聞かせているような痛々しさを感じさせます。

まとめ「踊ったもん勝ち」という究極の肯定

「ライアーダンサー」は、嘘をつかなければうまく生きられない現代社会の息苦しさを描きながらも、「それでもいいじゃん!」「踊ったもん勝ち!」と全肯定してくれる、最高にポジティブな曲なのではないでしょうか。

中身が空っぽでも、過去がツギハギだらけでも、未来はある。嘘から生まれた重音テトが歌うからこそ、その言葉には絶大な説得力が宿ります。

もしあなたが日々の生活に疲れ、自分に嘘をついていることに罪悪感を覚えているなら、ぜひこの曲を聴いてみてください。きっとテトが、下手でもいいから一緒に踊ろうと、あなたの背中を力強く押してくれるはずです。

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